病気との闘い

精神病院の隔離病棟をいかにして簡潔に脱獄する話

構図作成を開始した

 自分は高校生を中退させられ、あげくには精神病棟に閉じ込められていた。
 医者の診断は広汎性発達障害であり、統合失調症とも診断された。

 病院の中にいる人達は個性豊かな人達だった。
 切腹自殺して運ばれてきた人がいたり、元やくざで睡眠障害の人がいたり、影で突然悪口を言う人がいたりした。


 精神病棟はある種のパラダイスであった。

 毎日毎日同じ所をぐるぐる回って、本を読んで、奇声を上げている人達の悲鳴を聞き続ける生活は最悪だった。

 なので僕は決めました。
「よし精神病院から脱走しよう」
 それから頭の中で精神病棟脱走計画が始まった。



分析し見逃すな!

「おはようございます。見沢君、今日もいい天気ですね、廊下の散歩でもいきませんか」
 看護師さんの問いかけに、僕は興味なさそうにうなずいた。
「いいです。今度にします」
「そうですか、いい天気なのにね」
 何度も何度も看護師さんの誘いを断り続けた。
 それには理由があり、ある事を待っていた。


 主治医が動いたのだ。
 僕は外に出ない事はいけないと思ったのだ。


「見沢君、1人での廊下の散歩が許可されましたよ」

「気が向いたらいきますね」

 僕の単純な脱走計画が始まった。



脱走計画開始

まず僕が始めたのは、時間の分析からだった。
 何時にどういう人たちが隔離病棟にやってきて、何時に隔離病棟から出ていくかだ。
 病院自体の休館日を知る事も大事であった。

 スリッパではなく靴に変えても不自然じゃないようにするにはどうするべきかも考えた。

 家に帰るべき交通手段はバスと地下鉄なので、バスカードはあらかじめ隠し持っていた財布の裏に隠してあった。

 こんな事もあろうかと帰省の時に自宅からもってきていた。

 看護師さんに不自然がられないように、隔離病棟の入口の近くのイスに座ってひたすら本を読んでいるふりをしていた。
 
「そろそろ始めるか」

 僕は時計を見てベッドに入りゆっくりと眠る事にした。
 朝起きると、いつものように入院患者がラジオ体操をしていた。
 僕はそれにはいつも参加しないでいた。


 お昼くらいになっても脱走を始めない。

 始めるのは封鎖病棟から出た一般病棟の通院患者の人数が増える時間を待つ。
 ついに13時頃になった。

 僕はごく普通に看護師さんに告げた。

「すみません、外に散歩しに行ってきます」



脱走成功、その後、看護師や警察官に怒られる

 厳重に封鎖された扉をゆっくりと開く。

 看護師さんは僕の足がスリッパではなく靴である事に気づかない。

 外にごく普通に出る。
エレベーターに乗って、1階に到達する。
沢山の通院患者が歩いている。

 群衆に紛れる。

 この時間帯は警察官みたいな人はいない。

 普通に自動ドアをくぐり、何事もなかったかのように外を歩く。


 最初はゆっくりと歩いて、少しずつ走り出す。
地下鉄に乗って、時間的に15分が経過したころになると、祖母に公衆電話で連絡する。 

 祖母はびっくり仰天しつつも病院に電話する。

そのおかげで警察やらに追いかけられる事はなくなる。

 家に到着して、なぜか父親がいて、笑いかけると、僕の脱獄計画は終了。

 飽きたので、普通に病院に帰った。

 もちろんこっぴどく看護師さんには怒られた。



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