スポーツアジェンダ

史上最弱レスラーは日本が誇る有能サラリーマン?フナキの伝説

ジョバーという仕事について

かつて長州力は藤波辰爾にこういった。

「俺はお前のかませ犬じゃない。」

これはどういうことなのか、というと「噛ませ犬」つまり「負け役」ではないという言葉になる。

この「負け役」というのは業界ではジョバーといわれる。

大体、このジョバーをやるレスラーは若手かベテランかといわれている。

長州力はプライドが高かったので負け役を引き受けたくなかったのだろう。


ある意味ではそれで成功するかもしれないが、レスラー・関係者にはヘイトを浴びる。
実はプロレス興行において一番大事なのはこのジョバーであるといわれている。

特にWWEにおいてはジョバーは以下にヒールの強さを引き立たせるかに貢献するため、これをうまくできるレスラーはかなりの技巧派として多くのレスラー・関係者に尊敬をされるのである。

そんな出入りの多いWWEにおいて、20年近く在籍しジョバーとして活躍した男がいる。
その男の名前は船木勝一、米国ではフナキといわれている。



フナキ、その始まり

フナキこと船木勝一は大学卒業後プロレスラーを目指し、アニマル浜口のジムを訪ねる。

ここで彼はインストラクターを務め、ここで彼の世渡り上手が構築されていったのだと思われる。


しかしながら、身長175㎝という低身長と90㎏前後しかないプロレスラーとしては軽量級の体重から当時まだまだ重量級が好まれていたプロレスの世界では目立っていなかった。

1993年に藤原組でデビューした彼は石川雄規という相棒とともに新日本のタッグ戦線に参加するが、気絶してしまうという醜態を起こしてしまう。

やがて、団体を転々としながらフナキはある男と出会う。
TAKAみちのくであった。

みちのくとフナキは意気投合、「海援隊」といわれるタッグを結成した。


そして、1998年世界最高の団体WWFの試験に参加し合格したTAKAみちのくについていく形でフナキはWWFにデビューすることとなったのだった。



最弱のレスラー、最高のエンターテイナー

フナキとみちのくは、カイエンタイとしてWWFのタッグ戦線で活躍をした。

キャラクターとしては英語がしゃべれないが、なぜか彼らがしゃべるときだけ英語の吹き替えがつくという珍妙なお笑いキャラだった。


毎回出てきては無様に負ける、その役割にアメリカ人は大いに興奮した。

相棒のみちのくは軽量級王座であったWWFライトヘビー級王座のチャンピオンになったり、彼女ができたりと比較的イケメン的な扱いを受けていたがフナキはいつまでたってもみちのくの相棒というポジションであった。

しかしながら、それが受けてしまったのか。

みちのくが2002年に離脱したのとは逆にフナキは残留することとなったのだった。


そのころ、WWFからWWEに団体名が変わり番組もRAWとスマックダウンの二ブランド制になっていた。

フナキはスマックダウン所属になり、まさかのアナウンサー転向を果たした。

これがまた多くの人に受けた。

アナウンサーをすれば、そのたどたどしい英語に周囲は爆笑し、リングに上がれば派手に負ける。


その姿は多くのファンの声援を浴びることとなった。

気が付けば、スマックダウンの主役であったアンダーテイカーに次ぐ古株として00年代に君臨していた。

そして、当時の軽量級選手のベルトであったクルーザー級王座をまくこともあった。
彼は文字通り運営から愛されていたのだ。


フナキは日本人らしい「上からの命令を忠実に聞くサラリーマンタイプ」であったのだ。



現在のフナキ

00年代が終わりに近づいた2010年。

フナキはWWEを退団した。
しかし、退団したあともWWEの日本専用番組でナビゲーターを務めたりとかかわりは未だにあった。

この頃にはフナキは自由な時間を過ごし、他の団体の興行にも参加するなどしていた。
そして、2011年フナキはWWEに戻ってきた。

その役割はなんとスカウトであった。


この頃、WWEの総帥であったビンス・マクマホンには一つのたくらみがあったといわれている。
フナキはその伝令係を引き受けたのだ。

このたくらみとは日本侵略であったといわれている。

その後、2014年にはノアで活躍しているKENTAや2017年には新日本の主力選手であった中邑真輔を引き抜くことに成功している。

この契約をまとめたのは実はフナキであるといわれている。

事実、WWEの総帥だったビンスマクマホンは日本最大のプロレス団体である新日本プロレスを買収しようとすら考えていた。

それは失敗に終わったが、実現していれば恐らく日本のマットも大きく様変わりしていただろう。


そして、2022年現在フナキはプロレスラーとしてはセミリタイア状態になっている。

だが、虎視眈々と今でも日本のマットを見張っているのではないだろうか。