スポーツアジェンダ

南関東地方競馬のジョッキーたち

南関東地方競馬とは

競馬はJRAだけではない。
平日5日間、ほぼ必ずどこかで競馬が開催されている。


JRA(中央競馬)に対抗して「地方競馬」と呼ばれるそれらは、関東には「大井競馬」「船橋競馬」「川崎競馬」「浦和競馬」の南関東4場がある。
ダートコースなので、芝がメインの中央競馬とは異なる、タフでパワフルなレースが展開される。


JRAに入れなかった癖のある馬たちが入厩してくるため、荒々しく思いもよらないレースが観戦できる。
そんな癖馬たちを乗りこなすのだから、ときに地方競馬の騎手の技術は、JRA所属騎手を上回ることもある。
安藤勝己も、もとは地方(笠松競馬場)出身だし、トップジョッキーの戸崎圭太も南関東の出身だ。

船橋競馬のジョッキー森泰斗

特に「大井競馬」と「船橋競馬」の所属騎手は巧みであることが知られている。
今回は船橋競馬について解説していく。


船橋競馬のトップジョッキーは、地方競馬リーディングを獲得し続けている「森泰斗」である。
もともとは足利競馬場出身だ。
森の特色は、馬に無理をさせない騎乗をすることである。
地方競馬は強めの追い込みをする騎手が多い中、森は馬との折り合いを大切にし、馬の意志や性格を尊重する。


馬を大事にするため、自然と馬主や厩舎も森に依頼をかける。
また技術面では、コーナーの使い方やポジショニングの巧みさが光る。
ポジション取りは競馬において大切で、森は馬の脚質に合わせて、長い距離から追い込みをかける馬なら中盤から捲ったり、末脚のある馬は番手につけたりと、変幻自在の位置取りに対応できる。



船橋競馬のジョッキー 左海誠二

森の対極にあるトップジョッキーが左海誠二である。


左海の特色は、完全なる「スタート極振り」。
大レースでの勝鞍の殆どが、大逃げをかましての逃げ切りである。
ムチの入れ方が非常に激しく、出ムチを打ちまくって馬を序盤から奮起させ、最終直線でもビシバシと馬を叱咤して脚を余さない。


その騎乗姿勢は馬を壊しかねない部分もあるが、思い切りの良さによって掴んだ勝利は多い。
所属競馬場が異なるのに、南関東のトップ厩舎である浦和の小久保厩舎の主戦騎手であることからも、信頼の高さがうなずける。
馬を追える人材なので、溜めて溜めて後方一気の馬でも穴を開けることがある。
左海としてはハナを絶対に切りたいところだろうが、しぶしぶの位置取りでも巧みなのだから立派である。

船橋競馬場 期待の新人・岡村健司

さて、今はあまり勝ち星が多くないが、遠からず飛躍するであろう騎手が岡村健司だ。まだデビューして数年。
佐賀競馬場に一年以上の武者修行に出ていたこともある。


岡村の特色は「馬場読み」。
ダートコースの砂の状態を掴んで、馬のコースどりに反映する。
この馬場読みは騎手ごとに出来不出来の差が分かれるが、岡村騎手は馬場をしっかり掴んで載っていることが多い。


馬場が変化したことに気づかず、最終コースで馬鹿の一つ覚えのように外に出す騎手もあるなかで、インコースからの押上が効くとわかればすぐに対応したりする。
インコースの使い方も上手く、工夫した位置取りで、少し力の足りない馬を入着させる場面も多い。
スターとセンスもあり、悪天候で馬場が渋った日の短距離レースでは絶対に買っておくべき騎手である。